秘密 竹久梦二

秘密

竹久梦二

2026.9.21.

世上若有人问“为什么”,而你能回答出“因为什么”的事,那必定是些极其无聊的事。 

桌子有四条腿,狗也有四条腿,可为什么狗能走路,桌子却不能? 

就算能回答这样的问题,也毫无趣味可言。

然而,你若问我:“我为何出生?”试试看吧。知道的人不会说,不知道的人也不会回答。正因如此,才显得有趣。即便富士山有一万三千尺高,或某瀑布为世界之最,这些事也丝毫引不起兴趣。世界上我们所不知道的事情,还有多少呢?更何况在这宇宙之中,必然还存在着比人类迄今所知的一切更加浩瀚、更加深不可测的未知领域——但那是属于尘世的世界。

在年轻少女们的梦幻国度里,一切皆从心传至心,无需言语。因为没有任何“为什么”可以回答的问题,那些琐碎无聊的事,在这里根本不存在。

“须美啊,你到底怎么了?快看看这个,新年的和服袖子上沾满污渍,像这样脏兮兮的。”

母亲一边叠着须美的小袖,一边说道。母亲就是母亲,她并非如须美这般年轻的姑娘。母亲也曾年轻过,但她早已忘却了当年的心境,自然无法理解年轻女孩的心情。更不可能知道,须美曾偷偷将泪水藏进衣袖。世人或许以为,眼泪总是悲伤地流下,但在少女们的梦之国里,无论是喜悦、哀伤、委屈还是怀念,泪水都会无缘无故地滑落。

“怎么了?”母亲问道。

对此,没有人能说出“因为什么”。须美只是沉默地微笑着。

“有什么好难过的呢?”

其实并没有什么特别难过的事。但正是在这种时候,保持沉默的微笑,才是让梦之国变得更美、更快乐的法则。还有什么比微笑更安全的回答呢?正因如此,梦之国才得以不受侵犯,只有天真烂漫的少女们才能永远独占这片天地。

“你觉得你几岁了?”

母亲突然生气地问道。

“等新年一到,我就十六岁啦。”须美只管指着手指,掰着数给她看。

但这对美化少女梦之国的生活而言,未免太过肤浅。在梦之国里,人们从不计算青春易逝的岁月。

“从今年起,我已经十六岁了。”

母亲又特意强调道。

须美依旧沉默地微笑着。

在梦之国,一切都必须保密。秘密,秘密,秘密——世间还有比这更美的事物吗?不知何时,须美在校园里铃悬树的根部挖了个洞,她和S先生、A先生三人一起,各自将心中秘密的东西放进小盒子,再埋进土里,不让任何人知道。盒子里装了什么,S先生放了什么,A先生藏了什么,须美一概不知;而须美埋下的东西,A先生和S先生也同样无从知晓。每天他们都会来到那棵树下,三个人微笑着。

“你们在笑什么?”

老师这样问道。

梦之国的规矩,连老师也不能违反,三人只是静静地微笑。老师见学生不回答,便生气地走开了。三人看着老师的背影,又笑了起来。

有一次,体育老师在铃悬树下讲起南极探险的故事。他说世界的秘密就在南极,却不知道,在他脚下的树根处,也藏着梦之国的秘密。

少女们的秘密,远不止这些。在红带之间、在日记本里、在黑眸深处、在戒指之中,甚至在视线交汇的瞬间,都藏着“世人”无法读取的秘密。

梦之国的少女们,还能从花瓣飘落中、小鸟鸣叫中、流水潺潺中、人像马一样大笑时、老师像猴子般发怒嬉戏时,发现各自的秘密。

雨天里,撑着伞垂钓的人会变成蘑菇,樱花化作蝴蝶,纸拉门的影子幻成飞鸟。轻轻拨动柳枝,世界便显得悲伤;把子安贝贴在耳边,竜宫的歌声也会响起。

那些追问“为什么”的人,是不被允许进入山门的。他们被称为“破坏封印之道者”,与梦之国毫无缘分。

若你执意想了解梦之国的少女,请务必不要问“为什么”,而是要问:“苹果是树上的果实吗?”那样的话,她或许会回答“是的”,也可能说“不是”。无论哪一种回答,你都不该感到失望。

当阿尔弗雷德王问:“那么,这个国王属于哪个世界?” 

少女答道:“属于神的世界。”——这很聪明,因为她是个学校的学生。而梦之国的少女,也许只会高兴得流泪,或者默默微笑,就像那个山彦一样。

她们只回答别人提出的问题,从未主动开口说过话。

自吉良以来,美丽的少女便被禁止开口说话。而那个名叫“江子”的女孩,正是梦之国的少女之一。

有一天,得知丈夫正在江子家做客,于是前去一看,只见江子正滔滔不绝地说着各种无关紧要的事,把丈夫牢牢挽留住了。丈夫非常生气,从此以后,只允许江子回答问题,不再许她主动开口。后来某日,江子心爱的少年前来拜访她。如今,被禁止说出喜悦之事的艾子,一句话也说不出来,只能默默微笑着。 

可怜的少年生气地离开了,艾子则在一旁哭泣着。 

这个故事人人都知道,但少女的梦之国却就这样自古以来无人知晓地存在着。

秘密

竹久夢二

 一体世の中に、何故? ときかれて、何となればと答の出来る様なことは、ごくつまらない事に違ひない。

 机にも脚が四本ある、犬にも足が四本ある。何故、犬には歩けて、机には歩けないか?

 こんなことに答が出来たとて、おもしろくもなんともない。

 けれど、私は何故に生れたらう? とさうきいて御覧なさい。知つてゐる人は言はないし、知らない人は答はしない。それゆゑにおもしろいのです。富士山が一万三千尺あらうとも、ないやがら瀑布が世界第一であらうとも、そんなことは少しもおもしろくない。私達の知らぬことが世の中には、まだどんなに沢山あることだらう。それからまだこの宇宙には世界の人達が今迄に知つた事よりももつともつと沢山の知らない事があるに違ない、けれどそれは土の世界のことである。

 うら若い少女達の夢の国では、すべてが心から心へ話されるのである。何故? ときかれて答へられる様なつまらない事は一つもないのである。

「須美さん。あなたはまあどうしたといふのだらうねえ、これを御覧なさい、お正月の晴衣の袖をこんなに汚点だらけにしてさ」

 母様はお須美の小袖を畳みながら言ふのでした。母様はおつ母様である。おつ母様はお須美の様な若い娘ではないのである。母様も曾ては若い娘であつた。しかし若い娘の頃の事は忘れてしまつてゐらつしやる。それだもの若い娘の心持がおわかりになる筈はなかつた。ましてお須美が人知れぬ泪を袖にこぼした事を御存じの筈がない。泪とさへいへば悲しく流れるとばかり、世間では思つてゐらつしやらうが、少女達の夢の国では、嬉しいにつけ、かなしいにつけ、くやしいにつけ、なつかしいにつけ、わけもなくこぼれるのです。

 どうしたといふの? といふ母様の問に、何故ならば、と答へられることはない。お須美は、黙つて微笑んでゐた。

「何がをかしいの」

 何がをかしいのでもない。そんな時に、黙つて微笑んでゐることが夢の国を、より美しく、より楽しいものにする掟であつた。微笑ほど安全な答がどこにあらう。さうする事によつて、夢の国は少しも犯されず、知らずにただうら若い少女だけが、永遠に占領することが出来るのであつた。

「あなたは幾歳いくつだと御思ひだえ?」

 御立腹なさつて母様はさうおききになる。

 あたしお正月がきたらこれだけよ、と言つて指を折つて見せるのは、わけもないことでした。しかしそれは少女の夢の国の生活を美しくするにはあまりにつまらない方法でした。あまつさへ老いやすい青春の日を数へるといふことは夢の国ではせぬことなのでした。

「今年からもう十六なんだよ」

 母様の方がよくしつていらした。

 お須美は黙つて微笑んでゐた。

 夢の国では、すべてを秘密にする事であつた。秘密、秘密、秘密ほど美しいものが何処にあらうぞ。いつであつたかお須美は、学校の庭の鈴懸の木の根もとに穴をほつて、そこへSさんとAさんと三人で、思ひ思ひの物をお互に秘密にして小箱へ入れて誰にも知れぬ様に埋めておいた。小箱の中には、Sさんが何を入れておいたかAさんが何を秘したかお須美も知らねば、またお須美が何を埋めたか、AさんもSさんも知らない。毎日その木の根もとへ行つては、三人で微笑んでゐた。

「何を笑つてるの」

 先生がさうおたづねになった。

 夢の国の掟は、先生さへも犯されぬ、三人は、ただ微笑んでゐた。答をせぬ生徒を先生はぷんぷんお怒りになつて往つておしまひなすつた。三人は、それを見てまた笑つてゐた。

 ある時、体操の先生がこの鈴懸の木の下で南極探検の話をなすつた。世界の秘密は南極にあり、つて先生は仰言るけれど、つい先生の脚の下にも夢の国の秘密があることを先生はご存じなかつた。

 少女の秘密は、そればかりではありませんでした。赤い帯の間にも手帖の中にも、黒い眸の中にも、指環の中にも、または視線の間にさへも「世間」の人にはよむことの出来ぬ秘密があるのです。

 また夢の国の少女達は、花の散るのにも、小鳥の啼くのにも、水の流れるのにも、人間が馬の様に笑ふのにも、先生が猿の様にお怒り遊ばすのにも、それぞれ秘密を見出すことが出来るのです。

 また、雨の日に笠を被つて釣りをする人が茸に見えたり、桜の花が蝶に見え、障子の影が鳥に見え。柳を引けば世が悲しく、子安貝を耳にすれば竜宮の唄もきこえまする。

 それを何故ときく人は、山門に入るを許さず。封度はつとの道を犯すと言ふもの、夢の国には縁もゆかりもない人です。

 強しひても夢の国の少女をお知りになりたいならば、くれぐれも「何故」とはきかないで、林檎は木の実ですか? とおたづねくださいまし。さうすれば、ええ、と答へるかもしれませぬ。いいえ、と答へるかも知れません。そのどちらを答へられてもあなたは失望なすつてはいけないのです。

 しからばこの王は何界に属するや? とおたづねになつたアルフレツド王に、

「神の界に属します」と答へた少女は賢いのです。それは学校の生徒であつたからです。夢の国の少女は、ただうれしくて泣いたことでしよう。或は、黙つて微笑んだことでしよう。たとへばあの山彦です。

 こちらからたづねたことを答へるばかりで、曾て自分から言つた事はないのです。

 ぎりしやから以来、美しい乙女には、言ふ事は禁ぜられてゐるのです。あのにむふの娘ゑこをも夢の国の少女の一人だつたのです。

 ある日のこと、じゆのの夫がゑこをの許へいつてゐるのを知つて行つて見ると、ゑこをは用もないいろいろのことをお饒舌りして、じゆのの夫を引止めてゐたのです。じゆのは大そう怒つて、それからといふものはゑこをに答へることだけしか、ものを言ふことを許さなかつた。それから後のある日のことゑこをの好きな少年がゑこをの許を訪ねてくれた。ゑこをは嬉しいことを禁ぜられてゐる今は、一言も言ふことは出来なかつた。それで黙つてほほゑんでゐた。

 哀れな少年は、怒つて往つてしまつた。ゑこをは泣いてゐた。

 この物語は誰でも知つてゐる話だが、少女の夢の国はかうして昔から誰にも知られず来たのです。

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