欢迎加入NHK(4)

刚学日语没多久的时候,看了个番剧《欢迎加入NHK》,喜欢得不得了。如今断断续续也学了两年,挑战一下原著。

NHKにようこそ!

     2

 あぁ、楽しいなぁ、愉快だなぁ。

 床には脱ぎ捨てた衣服が散乱してて、台所には汚れ物が堆積してる、この狭くて汚い六畳一間で、俺はまさしくトリップだ!

 ゆらゆら壁が蠢いているよ。エアコンが深呼吸しているよ。

 ステレオのスピーカーさんも、お喋りしてる。

 あぁ、みんな生きてるんだ。世界はひとつなんだね。

 冷蔵庫さん、こんばんわ。

 コタツさん、俺を温めてくれてありがとう。

 ベッドさん、あなたの寝心地は最高ですよ。

 テレビさんも、パソコンさんも、いままで皆さん、どうもありがとう。

「佐藤さん! 早くひきこもりから脱出してね!」

 あぁ、皆さん、俺のことを応援してくれるのですか。

 ありがとうありがとう。こんなに嬉しいことはありません。

 俺はもう、大丈夫です。皆さんの温かい励ましのおかげで、俺はもう、ひきこもりから抜け出します。

 見ていてください。

 ほら、これからね、俺は外に出てきます。

 今は深夜の三時ですけど、そんなこと、気にしません。

 俺はこれから、この部屋を抜け出します。広大な世界へと、脱出します。

 でも、外は寒いから、ちゃんと身支度しなくちゃね。

 よいしょ。服を着て、帽子を被って、コートを羽織って──よし、準備オッケー。

 さぁ、これから俺は、外に行って来るよ。

 もう、俺はもう、ひきこもりなんかとは、おさらばするよ。

 じゃあね。

 さらば。

 ……が、しかし、なぜかアパートのドアは開かなかった。

 なぜだ?

 なぜ、ドアが開かない?

 そうして俺は、不安に駆られた。

 ──何者かが、俺の脱出を妨害している。

「そうだよ。だって佐藤さん。外に出ちゃったらひきこもりじゃなくなるもの」

 スピーカーがそんなことを言った。

 つまり──?

「妨害、されてるのよ」

 スピーカーが語ったその二言が俺にもたらした衝撃は、到底計り知れない。

 妨害。

 そう言えば、思い当たる節もあった。

 たとえば、俺がひきこもり生活を始めた、あの頃のことを思い出してみよう。

 ……あれは、暑い暑い夏のある日だった。

 俺は学校へと続く坂道を、首筋に不快な汗を流しながらもてくてくてくてく歩いていた。

 道に、人通りは少ない。

 買い物帰りの主婦。そして、俺と同じく学校を目指す若者。

 ほんの数人とすれ違っただけである。

 だが──確かにその日、学校への道のりは、いつもと違った。

 通り過ぎる人が皆、俺を見て、確かに、確実に、クスリと、クスクスと、小さな、小さな、それはほとんど耳には聞き取れない、だけど確かな──

 そう。俺を見て、彼らは確かに嘲笑していたのだ!

 主婦が、そして学生が、俺を見て笑っていたのだ。

 その事実に、俺は愕然とした。

 なぜだ? なぜ俺が笑われなければならない?

『……ねぇ、見てよあの人。おかしいよねぇ』

『気持ち悪いよね。外を歩かないで欲しいよね』

『ふふふ、馬鹿みたい』

 それは決して、おそらく、たぶん、俺の単なる被害妄想などではない。

 耳を澄ませば、確かに聞こえた。彼らが俺を嘲笑う、その声が。

 それ以来だ。

 それ以来、俺は外に出るのが恐ろしくなったのだ。

 つまり──

 スピーカーが言った。

「そうだよ。佐藤さんを笑った人たちは、妨害工作員だったんだよ。決して佐藤さんの被害妄想なんかじゃないよ。奴らは、佐藤さんの傷つきやすくてナイーブな心を利用して、ひきこもりに仕立てあげたんだよ」

 あぁ。

 そうだったのか! その瞬間、長らく俺の精神を覆い尽くしていた深い暗闇は、ついに取り払われた。

 ようするに、俺はいままで、何者かからの心理操作を受けていたのだ! そう考えれば、すべてのつじつまが合う!

 ……だけど、誰が何の目的でそんなことを?

 わからない。

 ──わからない。

 と、そのとき、ふいにテレビがこんな事を呟いた。

「NHKは皆様の受信料によって運営されております」

 いつもならば気にも留めないその一言は、しかしそのとき、なぜか俺の心をかき乱した。

 NHK。

 そのアルファベット三文字。

 そこに何か重大な秘密が隠されているような気がしたのだ。

 それは決して、単なる誇大妄想やくだらない戯言ではない。いかに今の俺が強力幻覚剤でトリップしている真っ最中といえども、冷静な判断力までをも失っているわけではない。

 むしろ頭脳は、この二十二年間生きてきたその生涯の中でも、最高潮に激しく回転している。

 1+1=2。2+2=4。ほら、論理的な思考もバッチリだ!

 だから、だから考えるんだ。

 今こそ俺は、考えるべきだ。

 NHK。その三文字に、俺に関する巨大な秘密が隠されている。

 それはあくまで単なる直感にすぎなかったが、もはやその真理に疑いは持てない。その着想は、すでに天啓と呼んでも差し支えはない。悟りと言っても過言ではない。

 しかし──あぁ。

 脳裏に浮かぶのは、NHKとの蜜月。

 思えば俺は、小さい頃からNHKが好きだった。

 小学生の頃は、「不思議の海のナディア」を見た。凄く面白いアニメだったよな。

 ……ん?

 アニメ?

 アニメと言えば、オタクだ。

 オタクと言えば、人付き合いが苦手だ。

 人付き合いが苦手な人間は、どうしてもひきこもりがちになる。

 ──そ、そうか。

 そうだったのか!

 ここにきて、ついにNHKとひきこもりが、誰の目にもはっきりとした直線によって連結された。

 つまりNHKは、あのような面白いアニメを放映することによって、アニメオタクを量産し、ひきこもりの大量出現に一役買っていたのである。くそ! なんて卑劣な!

 だが──もはや俺は奴らの陰謀に気づいてしまった。

 ここまで来たら、謎の完全解明まであと一歩だ。

 俺はコタツの上に突っ伏して、ひたすら頭を回転させた。

 クスリの作用によって、視界がグルグル回っている。部屋中の家具が、口々に俺を応援している。──そうなのだ。皆の助けを得た俺は、もはや何者にも負けはしない。いつまでもいつまでも、卑怯な妨害工作などに追いつめられているわけではない。いまこそ反撃の時なのだ。俺をいままで嘲笑っていたこと、それをお前らに後悔させてやる。

 ──あと一歩なのだ。

 もう少しで、すべての謎が、解けるのだ。

 だからテレビよ、コタツよ、パソコンよ──俺に力を貸してくれ!

「…………」

 そうして──

 ついにそのとき、俺はひとつの天啓を得た。

 それはすなわち、このようなことわざによって、俺の脳内に送り込まれてきた。

「名は体を表す」

 つまりNHKという名称それ自体が、かの組織の真実を物語っているらしい。

 NHKといえは、日本放送協会である。

 しかし、それだけでは意味が通じない。

 だから、もうひとつの意味、隠されたダブルミーニングが存在しているのだろう。

「……NHK。NHK」

 俺はぶつぶつとその三文字を繰り返し続けた。

「Nは、日本。ならばHは……」

 ……そうか。

 簡単な話じゃないか!

 ついに謎が解明された。俺はすべての真相を悟った。

「Hはひきこもり! すなわちNHKとは、日本ひきこもり協会の略だったのだ!」

   *

 その日から俺の戦いは始まった。

 幻覚剤によるトリップ中に、アパートのドアが開かなかったのは、単に鍵をかけていたせいにすぎなかったが、しかしそんなことは極々些細な問題にすぎない。

 ともかく俺は、戦い抜くだろう。

 NHKを倒すその日まで、俺は雄々しく戦い抜く。

 俺は決して、負けはしない。

 ……たまに死にたくなるけどさ。


トリップ【trip】:麻薬などによる幻覚状態。また,陶酔状態になること。

羽織る【はおる】:披上

おさらば:別れの挨拶をすること

一役買う【ひとやくかう】:自分から進んで一つの役目や役割を引き受ける。 「新総理誕生に―・う」 主动承担任务;主动帮忙

戦い抜く:最後まで戦う


这一部分基本就是对应番剧第一集的情节了

NHKのHは放送の意味じゃなく引きこもりだ!

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