【日语共读】《心》夏目漱石(159)


       《心》讲述的是“先生”结识并爱上了房东家的小姐,同时也赢得了房东太太的好感,但却因年少时曾受到叔父的欺诈而对他人时存戒心,迟迟不能表白自己的心意。后来,“先生”的好友K住进了房东家里,也爱上了小姐,直率的K向好友“先生"表白了自己的心事,“先生”在表面上批评K“不求上进”,背地里却偷偷地向房东太太提出要和小姐结婚。知道了这一切真相之后的K在绝望中自杀了,同时K的死也留给“先生”一生的不安和自责,婚后的“先生”一直无法忘却K,他的内心无比的寂寞,终于也走上了自杀的道路。



「Kと私(わたくし)は同じ科におりながら、専攻の学問が違っていましたから、自然出る時や帰る時に遅速がありました。私の方が早ければ、ただ彼の空室(くうしつ)を通り抜けるだけですが、遅いと簡単な挨拶(あいさつ)をして自分の部屋へはいるのを例にしていました。Kはいつもの眼を書物からはなして、襖(ふすま)を開ける私をちょっと見ます。そうしてきっと今帰ったのかといいます。私は何も答えないで点頭(うなず)く事もありますし、あるいはただ「うん」と答えて行き過ぎる場合もあります。


    我和K虽然属于同一系,但专攻的专业却不同,自然出门和回家的时间也各有早晚。倘若我回来的早,便穿过他的空室;倘若回来的晚,便同往常一样简单打声招呼,走进自己的房间。K总是放下书本,朝打开门的我看一眼,一定说声:“刚回来么?”有时我点点头并不作答,有时只‘嗯’一声便走过去。


 ある日私は神田(かんだ)に用があって、帰りがいつもよりずっと後(おく)れました。私は急ぎ足に門前まで来て、格子(こうし)をがらりと開けました。それと同時に、私はお嬢さんの声を聞いたのです。声は慥(たし)かにKの室(へや)から出たと思いました。玄関から真直(まっすぐ)に行けば、茶の間、お嬢さんの部屋と二つ続いていて、それを左へ折れると、Kの室、私の室、という間取(まどり)なのですから、どこで誰の声がしたくらいは、久しく厄介(やっかい)になっている私にはよく分るのです。私はすぐ格子を締めました。するとお嬢さんの声もすぐ已(や)みました。私が靴を脱いでいるうち、――私はその時分からハイカラで手数(てかず)のかかる編上(あみあげ)を穿(は)いていたのですが、――私がこごんでその靴紐(くつひも)を解いているうち、Kの部屋では誰の声もしませんでした。私は変に思いました。ことによると、私の疳違(かんちがい)かも知れないと考えたのです。しかし私がいつもの通りKの室を抜けようとして、襖を開けると、そこに二人はちゃんと坐(すわ)っていました。Kは例の通り今帰ったかといいました。お嬢さんも「お帰り」と坐ったままで挨拶しました。私には気のせいかその簡単な挨拶が少し硬(かた)いように聞こえました。どこかで自然を踏み外(はず)しているような調子として、私の鼓膜(こまく)に響いたのです。私はお嬢さんに、奥さんはと尋ねました。私の質問には何の意味もありませんでした。家のうちが平常より何だかひっそりしていたから聞いて見ただけの事です。

 

    有一天,我去神田办事,回来比平时晚了许多。我急步走到门前,哗啦一声打开隔扇门。与此同时,我听到小姐的说话声。那声音确是从K的房间里传来的。在这所宅院里,进了房门一直走,是茶室和小姐的卧房,从这儿向左一拐就是K和我的房间。房间的配置如此,所以住久了,无论在哪儿,是谁的声音,我一听就知道。我马上关紧隔扇门。于是小姐的话声也跟着停下来。我脱鞋(注:日本旧式房间,进门有一条平地,叫土间,然后才是地铺。进门后把鞋脱在土间,才能上地铺)弯腰解鞋带的时候——那时我为了赶时髦,穿的是费事的高腰系带皮鞋——K的房间里,谁的声音也没有了。我觉得很奇怪,心想许是我听错了吧。但是,当我象往常那样要穿过K的房间打开房门时,见两个人正端坐在那里。K照例说了声:‘刚回来么?’小姐没动身,也说了句:‘回来啦?’大概是心理作用吧,我觉得这句简单的问候有点生硬。好象她那语调总有些不大自然。我问小姐夫人呢?我的问话并没有什么意思,只是发觉家里比平时安静了些问问罢了。

   

 


主播介绍

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