桜: 今年(ことし)ももう終(お)わりか。早(はや)いもんだね。
桜の母: ちょっとあんた、片付(かたつ)け全然(ぜんぜん)終(お)わってないじゃない? 年賀状(ねんがじょう)もう。
桜: 明日(あした)やるよ、明日(あした)。
桜の母: 明日(あした)って? 明日(あした)は大晦日(おおみそか)よ。
桜: 分(わ)かってよ、そんなこと、大晦日(おおみそか)にまとめて全部(ぜんぶ)やるんだよ。
桜の母: 何(なに)言(い)ってんの? さっさとやることないと、年越(としこ)せないんだから。
桜: 越(こ)せるよ。部屋(へや)が散(ち)らかって言(い)うのが年賀状(ねんがじょう)が途中(とちゅう)だろう、越(こ)す時(とき)は越(こ)すんだよ。
桜の母: もう、またそんなこと言(い)って。ごろごろしてるなら、買(か)い物(もの)行(い)っても来(き)て頂戴(ちょうだい)。
桜: ええ、嫌(いや)だよ、私(わたし)が忙(いそが)しいんだから。
桜の母: 丸子(まるこ)!
桜: まったくも。一年(いちねん)中(じゅう)起(お)こり坊(ぼう)なお母(かあ)さんだね。
丸尾: 桜(さくら)さん!
桜: 丸尾(まるお)くん! 丸尾(まるお)くんのお母(かあ)さん、こんにちは。
丸尾の母: はい。こんにちは。
丸尾: ズバリ! お正月(しょうがつ)のお買(か)い物(もの)ですか。
桜: まあね。あ、丸尾(まるお)くん、そういえば、明日(あした)誕生日(たんじょうび)だいね。一日(いちにち)早(はや)いけど、おめでとう!
丸尾: ありがとうございます! 丸尾末男(まるおすえお)、何(なん)とか今年(ことし)を無事誕生日(ぶじたんじょうび)を迎(むか)えられそうです! これもひと言(げん)にお母様(かあさま)のおかげ!
丸尾の母: まあ、末男(すえお)さん!
丸尾: 母様(かあさま)! ところで、桜(さくら)さん、私(わたくし)に何(なに)かご意見(いけん)はないでしょうか。
桜: ええ? 何(なに)いきなり?
丸尾: 私(わたくし)これから家(うち)に帰(かえ)って、学級委員(がっきゅういいん)納(おさ)めをする予定(よてい)でして。
桜: 学級委員(がっきゅういいん)納(おさ)め?
丸尾: ええ。仕事(しごと)納(おさ)めをご存知(ぞんじ)ですか。
桜: うん、聞(き)いたことあるけど。
丸尾: それと同(おな)じで、今年(ことし)最後(さいご)の学級委員活動(がっきゅういいんかつど)をするのですよ。
桜: ええ? だって冬休(ふゆやす)みだよ学校(がっこう)ないじゃ。
丸尾: うん。ズバリ、今年(ことし)一年(いちねん)を振(ふ)り返(かえ)り、学級委員(がっきゅういいん)として至(いた)らない点(てん)がなかったかどうかを確認(かくにん)するのです! ささ、遠慮(えんりょ)せず、桜(さくら)さん。何(なん)なりと。
桜: えいと?
ナレーション: 言(い)いたいことあるんが、面倒(めんどう)なことになりそうな気(き)がする丸子(まるこ)。
桜: と、特(とく)にない。ま、来年(らいねん)も頑張(がんば)ってよ。じゃね、良(よ)いお年(とし)を。
丸尾: あ、桜(さくら)さん。来年(らいねん)もこの丸尾末男(まるおすえお)を、丸尾末男(まるおすえお)にどうか清(きよ)き一票(いっぴょう)を!
丸尾の母: 一票(いっぴょう)を!
桜: ただいま。あ、仕事(しごと)納(おさ)めに、学級委員(がっきゅういいん)納(おさ)めね、よくやるよ。
ナレーション: あんたも少(すこ)し見習(みなら)って、いろいろ納(おさ)めたらどうなだ?
桜: あれ、お父(とう)さん、出(で)かけるの?
桜の父: え、釣(つ)り納(おさ)めた。
桜: 釣(つ)り納(おさ)め?
玉の父: いいぞ、いいぞ、玉(たまえ)。はい、そこで一回(いっかい)くるっと回(まわ)って。
玉: もう、やめて、お父(とう)さん!
玉の父: 何(なに)を言(い)ってるんだ、玉(たまえ)? お父(とう)さんは今年(ことし)最後(さいご)の写真(しゃしん)を撮(と)りたいんだよ。撮(と)り納(おさ)めだよ、撮(と)り納(おさ)め。
玉: 私(わたし)、やっぱり帰(かえ)る!
玉の父: 玉(たまえ)!
桜: どうも、穂波(ほなみ)ちゃん。
玉: 丸(まる)ちゃん!
玉の父: これは桜(さくら)さん。どこかへお出(で)かけですか。
桜の父: いいえ。今年(ことし)最後(さいご)の釣(つ)りに行(い)こうかっと。釣(つ)り納(おさ)めですよ。
玉の父: ちょうど私(わたし)も今(いま)撮(と)り納(おさ)めの最中(さいちゅう)で、でも、なかなかいい写真(しゃしん)が撮(と)れなくて。
玉: 丸(まる)ちゃんも行(い)くんだ。
桜: うん。 私(わたし)食(た)べ納(おさ)めに行(い)くんだ。
玉: 食(た)べ納(おさ)め?
桜: お父(とう)さんがお昼(ひる)に美味(おい)しいものごちそうくれるって言(い)うからさ! 一年(いちねん)の最後(さいご)パーとお寿司(すし)でも食(た)べようかった思(おも)ってね。
桜の父: 何(なに)言(い)ってんだ? 大掃除(おおそうじ)が嫌(いや)で勝手(かって)について来(き)ただけだろう? それにおら、寿司(すし)なんて一言(ひとこと)も言(い)ってねえぞ?
桜: うん、いけずう。
桜の父: そうだ。どうです、穂波(ほなみ)さん、写真(しゃしん)を撮(と)るならご一緒(いっしょ)に海(うみ)ですか。
玉の父: いいですか。それはいい写真(しゃしん)が取(と)れそうですね。どうする、玉(たまえ)?
玉: 行(い)く! 丸(まる)ちゃんが一緒(いっしょ)なら!
桜: わあい! 寒(さむ)い。
桜の父: じゃね、おれはさっさっく。
玉: ねえ、丸(まる)ちゃん、これ見(み)て!
桜: わあ、きれいな貝殻(かいがら)だね。
玉の父: いいぞ、いいぞ。貝殻(かいがら)を拾(ひろ)って丸(まる)ちゃんバッチリ撮(と)ったぞ。
桜: 玉(たまえ)ちゃん、こっちこっち!
玉: 冷(つめ)たいね!
玉の父: いいぞ、いいぞ。冬(ふゆ)の海(うみ)で戯(たわむ)れる玉(たまえ)と丸(まる)ちゃんもバッチリ撮(と)ったぞ。
桜の父: こりゃ、でかいぞ。今年(ことし)一番(いちばん)かもしれんね。
桜: 頑張(がんば)って、お父(とう)さん!
玉: 頑張(がんば)って、丸(まる)ちゃんのお父(とう)さん!
玉の父: いいぞ、いいぞ。これこそ撮(と)り納(お)めにふさわしい最高(さいこう)の一枚(いちまい)になるかもしれない! 頑張(がんば)れ、桜(さくら)さん!
桜: お父(とう)さん。
玉の父: 桜(さくら)さん、それ?
桜の父: てやんでえ。
玉の父: 大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。次(つぎ)こそきっと。
桜の父: だと、いいんですが。
桜: そうだよ、お父(とう)さん。今(いま)のが釣(つ)り納(お)めなんであんたそれでも釣(つ)り人(びと)。釣(つ)り竿(ざお)が鳴(な)いてるよ。
桜の父: そ、そうだな。よし、もう一いってみるか。
ナレーション: しかし、一時間後。
桜の父: さ、……よ。しょうがない。そろそろしちゅうあげるか。
桜: え? じゃ、お昼?
桜の父: あ。
桜: わい!
玉の父: いいんですか、桜さん。
桜の父: え、しょうがないんですよ。
玉の父: そうですか。残念ですね。
桜: 何たべよう? お寿司もいい、プリンもいい、ハンバーグも。お父さん、私最高の食べお納めをしないと。
ナレーション: ところが。
玉の父: 年末だからでしょうか。
桜の父: ……しましょうか。
ボーイ: あい、すいません。四十分まちとなりますが。
桜: 結局パンって。
桜の父: しょうがないだろう? どこも入れなかったから。
玉の父: やはり年末はいつもと違いますね。
玉: でも、これはこれで美味しいよね、丸ちゃん。
桜: まあね。
玉の父: ありがとうございました。
玉: じゃね、丸ちゃん。
桜と桜の父: ただいま。
桜の母: お帰(かえ)り。あら、ダメだったの? 丸子(まるこ)は美味(おい)しい物(もの)を食(た)べて来(き)た?
桜: パン。
桜の母: パン?
桜: 何(なん)だかさえない一日(いちにち)だったね。私(わたし)最高(さいこう)の食(た)べ納(おさ)めがしたかっただけなのに。もう、何(なん)にも納(おさ)まってないし。
桜の祖父: 丸子(まるこ)や。
桜: お爺(じい)ちゃん。
桜の祖父: 一緒(いっしょ)にテレビでも見(み)んかんね。年末(ねんまつ)の特番(とくばん)で、お笑(わら)い番組(ばんぐみ)があるんじゃない?
桜: お笑(わら)い?
桜の祖父: 広志(ひろし)のやつ、よっぽど疲(つか)れたんじゃの?
桜: 違(ちが)うよ。一匹(いっぴき)も釣(つ)れなかったからだよ。もう、父(とう)さんってば。
桜の母: どう、丸子(まるこ)。暖(あた)まるわよ。
桜: うどんか。
桜の母: 文句(もんく)言(い)わないな。ほら、お父(とう)さんも起(お)きて。
桜: 美味(おい)しい。
桜の父: あ、うまいなあ。
テレビ: 早(はや)い来(こ)んでね。もう年(とし)の瀬(せ)。年(とし)の瀬(せ)が早(はや)く感(かん)じるのは年(とし)のせいかな!
桜: 無理(むり)なダジャレだよね。
桜の父: うん、俺(おれ)の屁(へ)よりくだらねえなあ。
桜の祖父: 今(いま)のどこはダジャレなんじゃ?
桜の父: 年(とし)の瀬(せ)と年齢(ねんれい)をかけてるんだよ。
桜の祖父: 年(とし)の瀬(せ)が早(はや)く感(かん)じるのは年(とし)のせい。あ!
桜の父: まったくう鈍感(どんかん)だな、爺(じい)さんは。
桜の祖父: うどん館(はん)?
桜の父: 一一(いちいち)説明(せつめい)させてだよ。
桜の祖父: うどん? は!
桜の姉: もう、爺(じい)ちゃんたら!
玉の父: ごめんください!
桜の母: あら、誰(だれ)かしら?
玉の父: いや、すみません。車(くるま)の中(なか)にフィルムを忘(わす)れてしまったようで。
桜: どう玉(たま)ちゃん、よかったらちょっと上(あ)がってかない?
玉: ええ? うん!
桜の母: 穂波(ほなみ)さんもどうぞ。ちょうどお茶(ちゃ)を入(い)れたところなんですよ。
玉の父: そうですか。すみません、それじゃちょっと邪魔(おじゃま)します。
テレビ: 飛(と)びます、飛(と)びます、飛(と)びます。
玉の父: あ、これだ!
桜の父: どうしました、穂波(ほなみ)さん?
玉の父: あ、いや。
ナレーション: 笑(わら)い納(おさ)めが一番(いちばん)似合(にあ)う桜(さくら)け、シャッターをきりながらそう思(おも)う玉(たま)ちゃんのお父(とう)さんであった。
桜: どのフルーツをキャッチするか。当(あ)ててね。いや。ほ。正解(せいかい)はリンゴ。当(あ)たったかな?