友子、無事に上陸したよ
七日間の航海で
戦後「せんご」の荒廃「こうはい」した土地「とち」に
ようやく立てたというのに、海が懐かしんだ
海がどうして希望と絶望の両端「りょうたん」にあるんだ
これが最後の手紙だ、後で出しに行くよ
海にくば割れた僕達の愛
でも、思いだけなら、許せれるだろう
友子、僕の思いを受け取っておくれ
そうすれば
少しはぼくを許すことができるだろう
君は一生「いっしょ」僕の心の中にいるよ
結婚「けっこん」しても子供ができても
人生が重要な分岐点に来るたび
君の姿が浮かび上がる「うかびあがる」
君は静かに立っていた
7月の激しい太陽のように
それ以上直視する「ちょくしする」のはできなかった
君はそんなにも、静かに立っていた
冷静「れいせい」につとめたこころが一瞬に熱くなった
だけど、僕は心の痛みを隠し
心の声を飲み込んだ
僕は、知っている
思慕「しぼ」という低俗「ていぞく」の言葉が
太陽の下で影のように
追えば逃げ
逃げれば追われ
友子、
自分の疚しさ「やましさ」を最後の手紙に書いてある
君に会い、懺悔する「ざんげする」代わりに
こうしなければ
自分の許すことなど少しもできなかった
本当にそうだと思えるまで
必死「ひっし」に思い込もう
そして
君が永遠に幸せになることを祈っています「いのる」