「現代文学を信用しないというわけじゃないよ。ただ俺は時の洗礼を受けてないものを読んで貴重な時間を無駄に費したくないんだ。人生は短かい」
「永沢さんはどんな作家が好きなんですか?」と僕は訊ねてみた。
「バルザック、ダンテ、ジョセフコンラッド、ディッケンズ」と彼は即座に.答えた。
「だから読むのさ。他人と同じものを読んでいれば他人と同じ考え方しかできなくなる。そんなものは田舎者、俗物の世界だ。まともな人間はそんな恥かしいことはしない。なあ知ってるか、ワタナベこの寮で少しでもまともなのは俺とお前だけだぞ。あとはみんな紙屑みたいなもんだ」
「あまり今日性のある作家とは言えないですね」
「とうしてそんなことがわかるんですか?」と僕はあきれて質問した。
「俺にはわかるんだよ。おでこにしるしがついてるみたいにちゃんとわかるんだよ、見ただけで。それに俺たち二人とも『グレート?ギャツビイ』を読んでる」
僕は頭の中で計算してみた。「でもスコットフィッツジェラルドが死んでからまだ二十八年しか経っていませんよ」
「構うもんか、二年くらい」と彼は言った。「スコットフィッツジスラルドくらいの立派な作家はアンダー?パーでいいんだよ」
“倒不是说我不信任现代文学。我只是不想浪费宝贵的时间,去读那些尚未经过岁月洗礼的东西。人生苦短哪!”
“你喜欢哪些作家呢?”我问道。
“巴尔扎克、但丁、约瑟夫。康拉德、狄更斯。”他立刻答道。
“都不是现代作家嘛!”
“所以我才读呀!如果你和别人读一样的东西,你的想法就只能和别人一样而已。那会是个乡巴佬、俗物的世界。一个认真、严肃的人是不会做那种丢脸的事的。知道吗?渡边!宿舍里稍稍认真一点儿的人就只有咱们两个了。其余的全是些垃圾。”
“你怎么知道?”我惊道。
“我当然知道罗!就像额头上盖了戳一样。一看就知道了。再说,咱们俩都在看『华丽的盖兹比』呀!”
我在心中计算着。“可是史考特,费杰罗死后也才过了二十八年而已呀!”
“才差两年,有关系吗?”他说。“像史考特。费杰罗这么伟大的作家可以稍微通融一下嘛!”
02
もっとも彼が隠れた古典小説の読書家であることは寮内ではまったく知られていなかったし、もし知られたとしても殆んど注目を引くことはなかっただろう。彼はなんといってもまず第一に頭の良さで知られていた。何の苦もなく東大に入り、文句のない成績をとり、公務員試験を受けて外務省に入り、外交官になろうとしていた。父親は名古屋で大きな病院を経営し、兄はやはり東大の医学部を出て、そのあとを継ぐことになっていた。まったく申しぶんのない一家みたいだった。小づかいもたっぷり持っていたし、おまけに風釆も良かった。だから誰もが彼に一目置いたし、寮長でさえ永沢さんに対してだけは強いことは言えなかった。彼が誰かに何かを要求すると、言われた人間は文句ひとつ言わずにそのとおりにした。そうしないわけにはいかなかったのだ。
宿舍里没有人知道永泽背地里是个古典小说的蛀书虫,就算知道,大概也不去注意这些吧。他们最清楚的莫过于他的聪明。轻轻松松就进了东京大学,而且成绩优异,将来还打算参加公务人员考试,进外务省当外交官。父亲在名古屋主持一家大型医院,哥哥也毕业于东大医学院,将来要接父亲的棒子。这一家子真是好得没话说。永泽手头一向宽绰,人又长得是风度翩翩,因此,任谁都会注意到他,就连舍监也不敢对他说重话。他不论是对谁提出要求,那人定会二话不说照他的吩咐做。因为你不能不这么做。
今日主播--漓
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