婴儿
作者 平山千代子
「おや?」と第六感にピンと来たので戸もしめずにのぞきこんだ。中には赤い小さな人間がねてゐた。成程赤ん坊だ。
“哎呀!”就好像第六感来了,门也没关就往里看。里面躺着一个小小的红色小孩。果然是个婴儿。
「生れたの? エツ! 男?」夢中になつて、しかし、半分男である様にと念じて伺つたのに「女よ」と、お母様はニヤ/\笑つておつしやつた。おや/\三分の一がつかりして、……さて改めてこの小さいけれど生物である赤ちやんを眺めた。
“生下来了?哎!男的?”我入迷了,可是,当我在心里祈祷着多半是个孩子时,母亲却默默地笑着说“是女孩喔”。哎呀呀,三分兴奋劲剩留了一分失望,……我重新打量起这个虽小但却是生物的婴儿来。
ヘエー、これでも人間かしら。いやに赤いなあ、猿みたいだ。泣くかどうか試めしてみたくなつたので、頭へ一寸さわつたら顔をしかめた。まだこの世に生を享けてからヤツと十四時間位しかたつてゐないのに、顔をしかめる事を知つてゐるなんて生意気だ。
啊,这还是人吗?好红啊,像猴子一样。我想试试她会不会哭,摸了摸她的头,她皱起了眉头。那家伙在这个世界上才度过了十四个小时,就知道皱起眉头,真是狂妄自大。
だけど実際、実に不思議だ。昨日までお母様と同じ人間だつたのが、もう今日は立派に一人前の人間だなんて……。実に妙な気持だ、してみると、私ももとはお母様と同一人物だつたのかな。でもおばあ様とも同じ理由だ。もつと/\さかのぼつて私達の遠い/\祖父とも同じなのかしら。
但实际上,真的很不可思议。昨天还是和母亲在一起,今天已经是堂堂正正的人了……。真是太奇妙了,这么说来,我原来也和母亲在一起吗?可是,奶奶也是一样的吧。追根溯源,我们遥远的祖父也是一样吗?
けれど、それが、今ではかうして一人前になつて、それぞれの考へを持ち、力を持つて生きてゐる。なんと不思議なことなんだらう。しかも、このふしぎなことが、大昔から今まで、何千年となく続き、自分もその仲間のどこかにぶら下つてゐる。
但是,现在也像这样成了一个人,有各自独立的想法,靠自己的力量地活着。这是多么不可思议的事情啊。而且,这种不可思议的事情从远古至今,几千年来一直持续着,我自己也是其中的一个。
私はなにが何んだか分らなくなつて、只、滅茶苦茶に赤ちやんの頭をいぢくつてゐた。
我不明白是怎么回事,只是胡乱地揉着婴儿的脑袋。