岸田首相(自民党総裁)が9月に予定される党総裁選への不出馬を決めたのは、「政治とカネ」の問題などを受けた内閣支持率の低迷から抜け出せず、党内からも責任論が出る中で、首相を続けるのは困難だとの考えに至ったためだ。刷新感を求める党内のムードにあらがえず、党の信頼回復のために身を引く判断をした。
世論調査で常に「ポスト岸田」として最も期待の声が高いのが、石破茂元幹事長(67)。これまで4度、総裁選に出馬したが、党員票では優位でも国会議員の支持が広がらず、苦杯をなめてきた。2012年総裁選でも党員票で安倍晋三元首相を上回ったが、国会議員票で安倍氏に勝てずに敗れている。かつて率いた派閥「石破派(水月会)」は議員グループに。総裁選には20人の推薦人が必要だが、今月8日に開かれた石破氏主宰の勉強会の出席者は8人で、「推薦人が20人集まるかどうか」(自民党関係者)が最大の焦点だ。
ただ、国民的人気の高さから「選挙の顔」への期待は高く、岸田首相の不出馬表明で今後、次期衆院選のタイミングが早まる可能性もあり、石破氏への支持状況が変わる可能性もある。
一方、石破氏とともに前回21年総裁選で河野太郎デジタル相(61)を支援した小泉進次郎元環境相(43)の判断も注目だ。進次郎氏は今回の総裁選出馬について、「出馬するかどうか熟慮している」(党関係者)といわれてきた。「ポスト岸田」調査では石破氏に続く支持があり、「選挙の顔」という観点では、石破氏以上の人気を誇る。ただ、「経験不足はいかんともしがたい」と不安を口にする自民党議員もいる。
一方、若手ながら実務能力の高さから一部の中堅、若手から強い期待感がある「コバホーク」こと小林鷹之・前経済安全保障相(49)も、進次郎氏とともに、裏金事件からの自民党の刷新イメージをアピールする上で、待望論が高まっている。小林氏にも経験不足への懸念や、今月9日のインターネット番組で、派閥パーティー裏金事件で処分された安倍派議員らを要職から外すとしている処分の「見直し」を求め、世論との乖離(かいり)が指摘された。ただ、コバホークや進次郎氏がもし総裁になるようなことになれば、40代の総理総裁。国民の信頼が失墜した自民党にとっては、大きな局面打開となる可能性もある。
岸田首相の「右腕」にもかかわらず、「意外と敏充」をキャッチフレーズにするなどして総裁選出馬に意欲的とみられてきた茂木敏充幹事長(68)や、前回も出馬した河野氏、高市早苗・経済安全保障相(63)、野田聖子元少子化担当相(63)らの動向も注目されることになる。
岸田首相と同じ岸田派だった林芳正官房長官(63)や、麻生太郎副総裁が一時「激推し」だったが最近は「失速気味」とされる上川陽子外相(71)も、「ポスト岸田」に名前を連ねている。