敬語
動作、状態の主体や受け手に敬意を表わす場合は、尊敬語・謙譲語などと呼ばれるものを用います。
尊敬語
※N:動作や状態の主体
(Nは/が)V(尊敬語独自の動詞)ます
*「知っている」の尊敬語「御存じだ」は「名詞+だ」であり、丁寧形も「御存じです」となります。
(1)山田さんはおそばを召し上がりました。
(Nは/が)おV(連用形)になります
(2)田中さんは毎朝、新聞をお読みになります。
(Nは/が)Vれます (グループ1・する)・られます(グループ2・くる)
(3)中田先生がこの本を書かれました。
(4)あの方は東京駅で降りられます。
謙譲語
(Nは/が)V(謙譲語独自の動詞)ます
(5)わたしはきのう渡辺社長のお宅を拝見しました。
(Nは/が)お・ご・V・N(動作を表わす漢語名詞)します
(6)わたしがかばんをお持ちします。
(7)係員がご案内します。
敬語
これだけは覚えよう
1 尊敬語・謙譲語・丁重語・丁寧語を合わせて敬語と呼びます。ここでは、尊敬語・謙譲語について説明します。
尊敬語
2 尊敬語では、Nが動作や状態の主体であり、Nに敬意を表わします。
3 尊敬語の形式には、①尊敬語独自の動詞を使うもの、②「おVになる」の形を取るもの、③「Vれる/Vられる」の形を取るものがあります。
①尊敬語独自の動詞を使うもの
(Nは/が)V
(尊敬語独自の動詞)
ます
¶「知っている」の尊敬語「御存じだ」は「名詞+だ」であり、丁寧形も「御存じです」となります。
(1)山田さんはおそばを召し上がりました。
尊敬語独自の動詞には次のようなものがあります。
辞書形尊敬語
普通形丁寧形
行く・来る いらっしゃる いらっしゃいます
いる いらっしゃる いらっしゃいます
食べる・飲む 召し上がる 召し上がります
寝る お休みになる お休みになります
死ぬ お亡くなりになる お亡くなりになります
言う おっしゃる おっしゃいます
見る ご覧になる ご覧になります
着る お召しになる お召しになります
する なさる なさいます
知っている 御存じだ 御存じです
②「おVになる」の形を取るもの
(Nは/が)おV(連用形)になります
(2)田中さんは毎朝、新聞をお読みになります。
¶「おVになる」は、「お-V連用形-になる」のように作ります。ただし、「来る」「する」とグループ2で語幹が1音節の動詞(「いる」・「見る」・「着る」など)は、「お V になる」になりません。また、2音節以上の動詞でも、尊敬語独自の動詞がある場合にはふつうこの形を取りません。
③「Vれる/Vられる」の形を取るもの
(Nは/が)Vれます (グループ1・する)
られます(グループ2・くる)
(3)中田先生がこの本を書かれました。
(4)あの方は東京駅で降りられます。
¶「Vれる/Vられる」は、普通形の否定形から「ない」をとった形に「れる」や「られる」をつけます。
ただし、「できる」「わかる」や可能形は「Vれる/Vられる」の形を取りません。
「Vれる/Vられる」の形は以下のとおりです。
動詞辞書形Vれる/Vられる
普通形丁寧形
グループ1 書く 書かれる 書かれます
読む 読まれる 読まれます
グループ2 起きる 起きられる 起きられます
受ける 受けられる 受けられます
グループ3 来る 来られる 来られます
する される されます
¶ただし、「する」は「される」という形になります。
4 名詞や形容詞を用いた尊敬語の形式もあります。
①「こちら、あちら、~さん、~様」など、その名詞で表わされる人物を高める名詞を用いる。
(8)あちらは山田様です。
②「お」「ご」を名詞の前につけて、その名詞の(広い意味での)所有者を高める。
原則として、「お」は和語、「ご」は漢語につきます。例外(*)もあります。
・「お」がつくもの:お名前、*お宅、お仕事、お部屋、*お時間、
*お電話、*お客 など
・「ご」がつくもの:ご住所、ご両親、ご兄弟、ご家族 など
(9)あなたのお仕事は何ですか。
(10)ご家族はどちらにいらっしゃいますか。
③「お」「ご」を人の状態を表わす形容詞の前につけて、その状態の主体を高める。(原則は②に同じ)
・「お」がつくもの:お忙しい、おひま、お寂しい、お早い、*お元気 など
・「ご」がつくもの:ご多忙、ご心配、ご不満、ご満足 など
(11)先生は来週もお忙しいようです。
(12)先生は来週もご多忙のようです。
5 謙譲語は、動作の主体(N)を低めることによって、相対的に動作の受け手に敬意を表わします。
6 謙譲語の形式には、①謙譲語独自の動詞を使うもの、②「おVする」の形を取るもの・「ごVする」の形を取るものがあります。
①謙譲語独自の動詞を使うもの
(Nは/が)V
(謙譲語独自の動詞)
ます
(5)わたしはきのう渡辺社長のお宅を拝見しました。
謙譲語独自の動詞には次のようなものがあります。
辞書形謙譲語
普通形丁寧形
行く・来る うかがう うかがいます
食べる・飲む いただく いただきます
言う 申し上げる 申し上げます
見る 拝見する 拝見します
②「おVする」の形を取るもの・「ごVする」の形を取るもの
(Nは/が)お
ご
V
N(動作を表わす漢語名詞)
します
(6)わたしがかばんをお持ちします。
(7)係員がご案内します。
¶「おVする」は、「お+V連用形+する」、「ごVする」は、「ご+V連用形+する」のように作ります。
¶「ごVする」の形になるのは、Vが「案内する、紹介する」のように漢語動詞の場合です。
7 6に加えて、動作にかかわる名詞の前に「お」「ご」をつけて謙譲の意を表わすこともできます。(お電話、お話、ご相談、ご連絡など)
(13)こちらからお電話さしあげます。
8 謙譲語と丁重語は、敬意の対象が違うので注意が必要です。例として、「参る」と「うかがう」の違いを確認します。動作の受け手が存在しない(14)’の場合、謙譲語の「うかがう」を使うことができません。また、(14)’’はまちがいではありませんが、「先生」は敬意の対象になっていません。
(14)先日試合で大阪に参りました。
(14)’×先日試合で大阪にうかがいました。
(14)''先日先生の研究室に参りました。
(14)'''先日先生の研究室にうかがいました。
9 敬語は基本的に次のようなときに使われます。
・目上の人(店員から客、学生から教師、職場の上司、年上の人など)と話すとき
・知らない人や親しくない人と話すとき
・改まった場面で話すとき
余裕があれば
10 聞き手が敬語を使う必要のない人物である場合には尊敬語・謙譲語が省かれる傾向があります。たとえば、聞き手が親しい友だちの場合、例文(5)は次のように言うことも多いです。
(5)’わたしはきのう渡辺社長の家を見たよ。
11 敬語を使うときに注意しなければならないのは、「ウチ」と「ソト」の概念です。たとえば、日本語では家族以外の人との会話の中で家族を高める表現を使いません。これは、家族を「ウチ」として扱っているからです。「ソト」に対して話すとき、「ウチ」の者を高めることはしません。さらに、自分の所属する集団・会社・組織などに属する人についても同様に「ウチ」として扱うことがあり、たとえば、会社では社外の人との改まった会話では社長について述べるときも謙譲語を使うのがふつうです。
(15)他社の社員:渡辺社長はいらっしゃいますか。
渡辺の部下:渡辺はただいま外出しております。
12 「いる」の「Vられる」にあたる形は「おられる」です。
出处:东京外国语大学